クリエイター志望の若者が後悔する前に知っておくべき、6つのこと

デザイナーにアートディレクター、プロカメラマンにゲーム会社から広告会社まで、クリエイターになりたいという人は多くいるはずだ。でも実際には、こういう人たちはどんな生活を送っているのだろうか。クリエイターは側から見ると派手。自分の好きなことをやって楽しそうな生活をしているのか、実態はどうなのか…?

筆者は日本で言えばみんなが知っている大手の広告代理店で働いていたが、既に退社している。周りに職を変える友人も非常に多い。特に制作系の会社に入ると毎日が非常に多忙になり、転職を考える暇もなくなってしまう。クリエイターというものは若い時にこそ憧れてしまう職業かもしれないが、絶対にやめた方がいい理由をここに上げていきたいと思う。それでも人は飛んで火に入るのだが…笑

美大から広告会社に入って、クリエイティブの道を進んで8年近くになる。動画クリエイター、アニメーター、デザイナー、フォトグラファーから編集者まで様々な人たちと仕事をしてきた。今回は、全ての制作系を目指す若者に読んで欲しい記事だ。

ぶっちゃけ言ってしまえば、クリエイターという仕事は本当にオススメできない。大人になると、もっと早く知っておくべきだったことがたくさんあることに気づかされる。後々になって、「これをもっと早く知っておくべきだった!」と筆者が感じたことを伝えたい。

広告会社にデザイナーとして入ったことを後悔したので、こうなる前に知っておきたかったことをまとめたいと思う。人生は基本的には情報戦だ。質の良い情報を持っているかいないかによって、生涯賃金やQOLは大きく左右する。

平均寿命が短い、まず歯をやられる

業界では知られていることだが、クリエイターの寿命は短い。筆者が以前勤めていた会社の平均寿命は、60代前半だった。定年年齢じゃないことに注意!

また筆者は美大を卒業しているので、友人の多くが制作系の会社に入っている。先輩はアニメ会社に入って土日なし、朝8時帰宅して風呂に入って寝て、その日の昼14時に出社という生活をしていた。一緒に入った彼女の同期は半分以上辞めた。その方はまだ現役なのだが、女性なのに前から3番目の歯が抜けてしまい、それを治療する暇もなく、やっと歯医者でなおした時にはその周りの歯もやられてしまい、現在ブリッジをつけている。かかった費用は30万らしい。

ちなみに、大学時代に超がつく程の大手出版社でバイトをしていた際の編集者も前歯がしばらくなく、入れ歯だった。最近久しぶりに会うことがあったのだが、こちらも30万で差し歯をつけたらしい。企業年金が高いと謳う企業もあるが、平均寿命が単純に短いだけなので注意して欲しい。

クリエイターは自由なんて嘘

クリエイターは自由そう、好きなことやってそう…なんてものは幻想だ。基本的に忙しいと思われている職種だ。それを漠然と捉えては行けない。人生における仕事の割合は非常に高いものだが、クリエイター界隈は普通の会社と同じなんて場合は少なく、それよりひどい場合がほとんど。そして、人間関係においても自由度が低い会社も多い点で、非常に注意だ。これは、D通子会社のデザイン会社の話だが、お昼になったらみんなで一緒に昼ごはんを食べないと村八分にあい、昼を食べ逃してしまうという。また、上司の徹夜に付き合わされる新人も多い。

大きな仕事に関われば関わる程、たくさんの人と関わり合いを持つことになる。自由を求めるクリエイター志望の人には耳が痛い話かもしれないが、自由なんてないのだ。例えば映像系に進めば、自由に撮れるなんて40代超えてから。数千万から1億を預かる監督は、基本的に信頼が重要。こういった組織は年功序列になる。完全なるピラミッドに迎合しなければいけない。

そういった組織の面倒臭さを抜け出そうとフリーランスになろうとする人も多い。こちらはと言うと、収入が不安定になりお盆休みも喜んで働くドMフリーランスの道が待っている。

じゃあ大手に行けばいいんでしょ?というのも誤りだ。問題はわんさか。サラリーマン的な性格の強い人が集まる集団になるので、実力主義はなんのその。もちろん年功序列社会であるし、上司が部下に仕事を放り投げて、部下が朝の4時5時まで会社に残ることなど、日常茶飯事だ。仕事がないという状況がそもそもなく、チームの誰かがいそがしいために、あまり休養などをとれない。責任問題が大きいのでフォントを一箇所変更するだけで何回も確認が必要になるので、迂闊に自分のデザインとしていじれないのだ。

仕事に邁進することも大事だが、もっと大事なことがあるという人は絶対に向かない。ちなみに、代理店では離婚者や独り身が多いのだが、制作会社では何故か社内恋愛が多発する。筆者の知り合いのアニメ制作会社では、職場で年に何組もカップルが出来て結婚しているので、今は全然構わないという人も今後どうなるかわからないぞ!

一流気取りのコミュ障が多い

クリエイター界隈には組織を無視して生きてきたおじさんが結構いる。囚われないという意味では非常に羨ましい限りなのだが、特に若い頃は周りにいる人に翻弄させられることになる。特にこういうタイプは、佐藤可士和や田中一光といった一流でもないのに態度だけは一人前っていうおじさんがたくさん。これはもう耐えられない。

クリエイターには、その分野には特化(?の人もいる)しているが、コミュニケーション能力が驚く程低く、自分の制作する制作物や賞を取ることばかりに気を取られた一匹狼タイプには非常に注意だ。他の案件対応中に、「俺の制作物を対応しろ」や「さっさと出力だせ!」だのとゴダゴダ言い出す自分勝手なおじさんがたくさんいる。会社の力を使って、自分はのらりくらりとしながら協力機関に無理を言わせて数十年という輩なので、もうぶっちゃけ手に負えないレベルだ。利己的な人はちょいちょいいるので、理不尽にキレられるのは不可避。こういった人たちがたくさんいる会社で耐えられるのかという問題は大きい。

金銭的な問題

クリエイターにおける金銭的な問題はどうなのか。実際には、業界で名の知れたデザイン・動画広告系に携わる業界一、二年目の新人クリエイターの家賃は7〜8万のところに住んでいて、普通にアジアぐらいなら海外旅行に行けるし、都内でもちょこちょこ遊べるよといったところ。その下請けの制作会社になると、ちょっと厳しくて手取りが15〜16万ぐらい。筆者も会社に入るまで知らなかったのだが、同じようにデザイン会社と括っても、画像の差し替えやチラシやパンフレットの価格変更のみを行う会社もあるのだ。

アニメーターでは月収は10万いくかいかないかぐらい。親のスネをかじりながら、実家暮らしをして、絵を書きながら生活をしている人も多い。大手ゲーム会社の友人は、残業代が青天井で出る会社だったので、羨ましいなぁと思っていたら、新卒で1,000万稼いだ後、駅で倒れた。頑張るだけ頑張れるという会社もあるが、一度倒れると倒れやすくなってしまうらしいので注意だ。

完全なるフローのビジネス

世の中のデザイナーの大半は人のためにデザインをつくる究極のサービス業であるし、動画クリエイターもそう。アニメーターも発注側のお客さんのストックで出る利益のために自分は安月給でも働くのだ。

自分で商品を持っているメーカーなどに比べて、自社が売る商品を何も持っていないデザイン会社は、常に取引相手に対してサービスを提供し続けなければいけない。この企業体質が、まさに自分の生活を直撃する。深夜に電話はかかってくるし、下請けの制作会社になればなる程、最近働き方改革で徐々に良くはなってきているが、土日なんて無い人も多い。スケジュールなんてほとんど無いし、連日深夜まで鬼のように働かされる。仕事を発注する側である広告代理店がそんな状況なので、全体が悪くなってしまっている環境だ。これによって、家庭が崩壊して離婚するケースは非常に多い。

こういったデザイナーや動画クリエイター、アニメーターなどの職業の多くフロービジネスと呼ばれる。一見、手に職がある良いビジネスだと思われがち。しかし、フローのビジネスを人生で続けていては、人に左右され、一生辛いままだ。

反対にストックビジネスと言うと、投資家やYoutuber、作家は自分が一度作品や動画を出すと、そのもの自体に利子がつくことで、最初に頑張ってしまえば後々に何もしなくてもお金を生み出すことができる仕組みを持った職業のことを言うのだ。株を持っている人の配当収入もストックだし、不動産業なんてまさにそう。ストックを持っているビジネスにも弱点はあるのだが、緊急対応や深夜残業が突発的に何度も起こる体質の会社はこのビジネスモデルで判断できる。就職や転職の際には、自分がこれから就職や転職をする際に、よくよく熟考してほしい。

すぐに、個人でストック型の利益を得ることは簡単ではない。デザイナーが絵本を作って売れるかもしないし、今動画制作会社の編集マンをしている人が、今後YouTuberとして活躍するかもしれない。資本主義社会で豊かな生活をしようと考えるなら、ストックとなるビジネスを私たちは創造しなくてはいけない。

どれだけ勉強しても、プロフェッショナルだとしても、それをストックしていかなくては、ラットレースを続けるようなもの。最初は難しいかもしれないが、自分のストックになるような挑戦をどんどんしていかなくては、究極のサービス業の歯車として動き続けることになる。

デザイナーやフォトグラファー、アニメーターといった仕事だけがクリエイターではない。

クリエイターという言葉に騙されずに、世の中にあっても無くても構わないようなものを作るのでは無く、まず自分の人生のクリエイターになってほしい。どうすれば自分らしく、楽しい生活が送れるのか真剣に考えてから確信に変わった時、大体は実現するはずだ。

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