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ゴッホの耳から改造赤ちゃんまで。人間の未来を考える「未来と芸術展」とは?

東京 六本木にある森美術館にて、新しい科学技術の発展によって人間の生活にどんな影響を与えるのかをテーマにした展覧会『未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命─人は明日どう生きるのか』が開幕しました。

社会システムから細胞レベルに到るまでの科学技術の進歩が、未来の私たちの生活スタイルにどのような影響を及ぼすのかを体感できる美術展です。

会場構成は、未来の都市や社会システムからIPS細胞などによる細胞レベルのものまで。マクロからミクロへと足を進めていきます。情報量が多い展示の中から、印象に残ったものを紹介します。

ポッドオフグリッド

シンガポールの設計会社ポメロイ・スタジオによる作品です。

ポッドオフグリッドは、海上に浮かぶエネルギーインフラに頼らないコミュニティ創出を目的としたモジュール型の開発都市のプロトタイプです。

各モジュールには住居や公共施設、農業地などのセクター。発電、濾過に廃棄物処理を行うユーティリティユニットがから構成されます。世界各地で展開可能です。

シンガポールでの展開例

NEO出島

NEO出島は、美術家 会田誠による都市構成も展示されています。

霞ヶ関地区の上空に扇型をした都市空間が浮かんでいます。グローバル・エリートのための都市であるNEO出島は、1634年に長崎につくられてあ貿易のための人工島である出島に着想を得た都市計画。

永田町の上に建造目的は「バブル崩壊以降に失われつつある、アジアのあらゆる面のハブの座をシンガポールなどの他の都市から奪還すること」とのこと…笑 日本が存在感を失わないために、現代の出島をつくるという実現性を度外視した提案は、現代のエリート主義や格差社会への痛烈な批判とも捉えられます。

THE ORB

この巨大な球体は2018年にアメリカ ネバダ州北西部の人里離れた砂漠で開催される「バーニング・マン」で発表されたもの。

クラウドファンディングで資金調達された巨大な球体は、地球の表面の50万分の1スケールの大きさ(直径25m)。Googleのラリーペイジ等著名人にも愛されるバーニングマンでは、こんな作品も展示されるのですね!

「球体」は、地球を愛する人達への鏡であり、SF愛好者のための新しい惑星であり、旅行者達へのみちしるべであり、パーティ好きな人達のための巨大なミラーボールとも捉えられます。「The ORBは見る者に違った視点を与えてくれるでしょう」と作者のビョーク・インゲルさんは語ります。

NASA 3Dプリンター製住居コンペ案

こちらは、4人の宇宙飛行士が火星に移住し1年間働くことができる住居を3Dプリンター製で建設する提案です。

第一段階では、3Dプリンター機能を持つ自律型ロボットが火星に送られます。火星の表面にある豊富な砂を材料に電磁波から防御するシェルターを作ります。

第二段階では、宇宙飛行士が住むための可変性住居用ユニットが建設されます。折りたたまれていた居住空間が第一段階でつくられたシェルター内で膨らみます。

こちらの建設工程に関しては動画も上がっていますので、是非チェックしてみてください。

MX 3D BRIDGE

こちらはオランダの首都、アムステルダム中心部の運河にかけるために計画された3Dプリントによる橋です。

ステンレスを溶かしながら排出する専用ツールをコンピューターで制御することによって製作されました。

従来の鋳造による金属成型ではなく、ロボットアームで金属を積層させながら形態を成型する手法により複雑で自由な形をつくることができます。
人間とロボットが融合した未来の建築と施工の姿を思い描くことができます。

こちらは製作工程の動画です。

ムカルナスの変異

ムカルナスとは、イスラム建築で見られる持ち送り構造の修飾のこと。

イスラム建築にみられる通常のムカルナス。

ムカルナスは、数種類の単純な幾何学的模様を繰り返すパターンが特徴的です。

本作では、コンピューターを用いたシミュレーションによって、人間では到底作画できないデザインを生み出しています。

論理的に計算されたデジタルならではの形態を持ったムカルナスは、私たちの目には美しさを感じさせると共に不気味さも感じさせます。

人工知能に支えられた現実の不気味さを、一方でそこで生まれつつある美意識の共存を楽しめます。

H.O.R.T.U.S. XL

こちらは、エコロジックスタジオがオーストリア インスブルック大学との共同開発したバイオ彫刻です。

サンゴの形をコンピューターによってシミュレーションした造形物は3Dプリントでの出力に最適化された三次元のブロックに分割してつくられました。

ブロック内には、微細藻類が埋め込まれており、まるで建物自体がひとつの生命体のようにも見えます。この考え方を建築分野に応用すると下記画像のような感じ。太陽光によって付着している藻類が光合成を行うため、酸素を生成しながら造形物内で生物コロニーが形成されていきます。

建築や都市の形を環境に順応させるべくコンピューターが最適化をおこない、生物との融合によって機能を作り出しました。

機械と自然の双方の知性を組み合わせることで生まれる空間。デジタル技術にライフサイエンスや神経科学に、生物学が融合することによって新たに生まれる建築の分野を描き出しているのではないでしょうか。

アヒム・メンゲス/ コンピューテーショナルデザイン&建設研究所

こちらは、室温度によって形状を変化させる新素材。周囲の環境に反応する建築を電気エネルギーや機械的な制御を使用せずにつくることができると言います。



雨が振ったら動力を必要とせずに閉じる窓が実現する日は近いのかもしれません。

インターナル・コレクション

解剖学に基づいて、人間の神経系や肺などの体内の組織を主題に製作された一連のドレスたち。身体の3DスキャンやCADによるデザイン、そして職人による手縫いの技術で仕立てています。

呼吸器系をモチーフに製作されたドレス。なかなか…

ビストロ・イン・ビストロ

人工培養肉を生産する未来を描いたもの。未来では、肉は培養されてつくられるため、動物に痛い思いをさせません。

右下の肉は…脳かな?

本作では、新しい食材やメニュー、食週間などが模型や映像、レシピ本で紹介されていました。

料理に関してはまだ実在しないため、2028年1月からの予約受付中ということになっています。鶏や豚、牛などの肉類から牡蠣や海老などの魚介類までをラボで培養するとのこと。

こういった肉を食べるのが当たり前になってくるのでしょうか…??

SUSHI SINGULARITY

私たちが生きる上で不可欠な「食」がテクノロジーの進化によってどう変わるのかを考察するプロジェクトです。「味の四原色」という考え方を基に寿司がデータ化されます。

このデータ化された食品は米粉や観点、大豆や海藻原料のジェルを主原料として3Dプリンターやロボットアームで造形化されます。ハニカム構造やトラス構造をも取り入れ、これまでにない食感が作り出されます。

データ化された寿司は、インターネット上で共有や編集が可能です。

私たちの栄養状態やDNAを分析して体の健康データに基づいたカスタマイズ化も今後可能になるかもしれません。

バイオ技術や情報技術の発達は、私たちの食文化のあり方をどんどん変えていくのでしょう。近未来の寿司って感じ!!

ヒューマン・スタディ#1、5RNP

机に設置されたポールと名付けられたロボットアーム5台がボールペンを使い、椅子に座る観客の顔を模写していきます。

学校にある古めかしい机と椅子が使われた本作は、人物デッサンの授業のような雰囲気が醸し出されます。


ロボットが描くデッサンは、ロボット経由での人間の行動についての研究と言えるのではないでしょうか。カメラが確認している様子は、生きているようでかわいいです。

観客が自分の絵を描いてもらえます。

わたしは人類

人類滅亡後の音楽をコンセプトに新しい音楽の形を探る作品。微生物の遺伝情報をもとにやくしまるえつこが楽曲製作しました。その記録媒体として遺伝子組み替え微生物のDNAを使用することで、現代のバイオテクノロジーが可能にする新たな作曲と録音方法が模索されています。

展示室に流れる音楽は25億年前から生息すると言われる微生物であるシネコ・ココッカスの塩基配列が本作品のために独自配列された特殊な暗号表によって変換され、遺伝子組み変え微生物のDNAに保存されたもの。

いつか人類が本当に滅亡した後、新たな知的生命体が現れて、想像を超えた方法で本作を読み解くのかもしれません。


シュガーベイブ

フィンセンファン・ゴッホが切り落とした左耳を「生きた状態」で再現した本作は、言わば「タンパク質による彫刻」です。

話しかけると、神経インパルスを模した音がリアルタイムで生成される仕組みを持ちます。この作品の元になった細胞は、ゴッホの父系の玄孫リーウ・ファン・ゴッホの耳の軟骨細胞と母方の子孫の唾液から抽出したミトコンドリアDNAです。

ゲノム編集によってDNAを復元し、マンモスなどの絶滅種を復活させたり死んだペットをクローン技術で取り戻そうとしたりする現代の極限的な欲望の一端を映し出します。

変容シリーズ

外科手術で身体機能を強化した新生児の展示です。

よりよい大人になることを願って、我が子の体を修正したとのこと。

頭皮の面積を引き延ばすことで面積が増え、より早い熱放出が可能になった新生児。地球温暖化環境や知恵熱にも強そうです。

出生児に子供の体への介入が健康や身体能力の増強を目的に行われる未来を描き、親が子供をデザインすることはどこまで許されるのかを問いかけてきます。

リーシャン

体の一部が人間の体の一部になっていることがわかります。バイオ技術の発展によってはこういった動物の生成も可能なのかもしれません。

親族

オランウータンと人間の架空の交配種です。

「自然とは何か。人工的に新しい生命をつくることは進化と呼べるのか。」

「代替臓器をつくるためにヒトと他の生物種を混合体をのような生命に対して人は共感できるのか。」

「人間のにニーズに合わせて人工的に進化させることは、どこまで許されるのか」

を問いかけます。

Boundaries

こちらは、アーティストの尾崎ヒロミ(スプツニ子!)とファッションデザイナーの串野真也によるユニット、ANOTHER FARMによる製作。

遺伝子組み替えされた蚕から作られる、光るシルクを素材に能衣装がつくられました。

幻想的すぎる!

末期医療ロボット

白く無機質なパーツで構成されたロボット。これは、人間の死を看取るためにつくられました。病室のベッドの上でさすれられながら、「ご家族・友人が来られず残念ですが、快適な死をお迎えください」と慰められながら一人きりで他界します。

社会システムから細胞レベルに到るまで未来の人類の生活を垣間見れた本展示。非常に情報量が多いですが、興味深い作品が多く楽しめました。会期は2020年3月29(日)までなので、是非足を運んでみては如何でしょうか!?

◾️展示概要

<会期>https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/future_art/index.html

2019.11.19(火)~ 2020.3.29(日) ※会期中無休

<価格>

一般1,800円

学生(高校・大学生)1,200円

子供(4歳~中学生)600円

シニア(65歳以上)1,500円

未来人優待やゴッホ割等の割引もあるので、お見逃しなく!

<公式サイト

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/future_art/index.html