ケアレスミスが人類に与えた影響と克服方法
自分の仕事がどれほど完璧だと思っていても、ヒューマンエラーは常に脅威をもたらします。事実、ネットワークセキュリティやデータ侵害の52%にすでに関与しており、多くの悲劇の根本原因となっています。
私たちの身の回りに潜むヒューマンエラーは一体どんな影響をもたらすのでしょうか。そして、その影響をどのように阻止すればよいのでしょうか?信用問題にも金銭問題にも大きく関わるヒューマンエラーを克服して、日々の生活を豊かにしましょう。
Contents
小さなミスや思い違いが引き起こした事故が凄い
1億9,300万ドルと数え切れない作業時間を灰にした火星探査機の悲劇
ヒューマンエラーは、どんなときでも発生する可能性があります。 経験を積んだ人でも、自分の専門知識や行動を過信してしまい間違った行動を実行しやすいと言われる程です。それはまさにNASAの火星探査プロジェクトで起こったことであり、宇宙航空学の学者ですら人為的エラーから逃れることはできません。
問題になったミスは、計算に使用した単位の取り違えから発生しました。エンジンの噴射推力計算を行っていたチームが計算の単位にヤード・ポンド法を使用。それを別のチームがメートル法として受け取っていました。そして、双方が同探査機打上げから事故発生までの9ヶ月もの間、この深刻なミスに全く気づくことはありませんでした。
探査機が火星に到達したとき、プログラムされた軌道は安定した軌道を維持できず、火星に近づきすぎて燃え尽きることになりました。僅かなミスが1億9300万ドル (約210億円)とそこにかけた膨大な時間が一瞬にして消え失せさせました。
チャレンジャーシャトルの悲劇
TV中継で全世界の人々が見守る中、アメリカ・NASAのスペースシャトル・チャレンジャー号が発射直後に大爆発を起こし、乗組員7人全員が死亡しました。
この事故から得られる教訓は、大きな事故も小さな部品から引き起こされること。ブースターロケットのOリングが寒さで硬化して弾性が失われ、ガス漏れ検査するための穴から燃料が漏れました。これに炎がロケット下部から燃え移り爆発したと推定されています。
実は設計者が危険性を把握し報告していたのにも関わらず、管理者が許容可能と判断しチャレンジャーを飛ばしました。チャレンジャーの事故は、ヒューマンエラーが気づかれても、チェックされなかった場合に何が起こるかを教えてくれる非常に重要な事例です。
英国では毎年誤って給油された30万台の車両を修理するために1億5,000万ポンド(213億円)がかかっている
英国では毎年約30万台の車両が間違った燃料で満たされ、少なくとも1億5,000万ポンド(日本円で213億円)の修理費用がかかっていると推定されています。
自動車への燃料補給は筆者も含めて多くの人が当たり前のことと考えているプロセスであり、非常に簡単です。 新しい車を購入したりする時など、その変化を考慮しなかったりすると、このような単純なエラーを修正するために多大な時間、お金、無駄な努力を費やさなくてはいけません。
ヒューマンエラーの種類
原因を特定できずに、適切にヒューマンエラーに対処するのは困難です。まず、実際に直面している問題がヒューマンエラーのどの分野にカテゴライズされるのかを調べる必要があります。一口に言うと、ヒューマンエラーには行動エラーと、思考エラーの2つのカテゴリーに分けられます。
行動エラー
行動エラーは、その行動が計画されたものと異なる場合に起こるもの。プロセスに精通している責任者が意識的な思考ではなく、作業を本能に依存している時に起こりやすいです。行動エラーは次の2つに分けることができます。
スリップ(slips/滑る)
スリップは意図しないアクションのことを指します。行動だけがルーチン化されているためにボーッとした時などに起こるので、意識の覚醒や注意の喚起といった対策が必要になります。鉄道運転員が行なっている指差し確認などはこのエラーを避けるための方策の一つです。
<例>
・間違ったボタンを押すか、間違ったレバーを引く
・締めようとするときにバルブを緩める
・数字をコピーするときに数字を転置する(例:0.13ではなく0.31を書き込む)
ラプス(lapses/経過)
実行段階での”抜け”の失敗によるエラー。手順忘れや気の焦りが引き起こします。計画自体は正しかったのに、実行の段階で”抜け”が出てしまって失敗してしまったもの。
<例>ガソリンを入れた後、キャップを閉め忘れる
思考エラー
ご想像のとおり、行動エラーを考えることとは逆です。思考エラーとは、知識の欠落や不明瞭な指示などが原因で、間違ったタスクを意図せずに正しく実行することです。関連するタスクがどのように実行されているかではなく、あなたがそれらを行うに至ったプロセスにエラーがあります。思考エラーには次の2つがあります。
ルールベースのエラー
「〜〜の場合は〇〇」 というように、ルールに基づいて意識しながら実行されます。ルールを熟知していても、勘違いによって誤ったルールを適用してしまうことがあります。
知識ベースのエラー
自分の持っている知識や経験に基づいてどのような行為を すればよいか考えて実行します。知識や類似経験から判断しますが、新人であればそもそも知識が十分に足りていなかったり、ベテランでもリスクを過小にとらえることによるエラーが発生しやすい傾向にあります。
ヒューマンエラーを克服するために
すでにお話ししたように、ヒューマンエラーを完全に排除することは不可能です。特定のプロセスに関わる人間をすべて排除することはできないため、常に間違いを犯してしまうリスクがあります。 人間が関わらない場合でも、使用する機械やソフトウェアに基づいたある程度のエラーを考慮する必要があります。しかし、ヒューマンエラーの影響やリスクを大幅に制限する方法はあります!それは、プロセスを文書化しチェックリストを作成することです。
チェックリストを使うとミスを大幅に削減することができる
1935年、ボーイングは陸軍からの新しいデザインの要請に応じてB-17を制作、『空飛ぶ要塞』と呼ばれました。 要求された爆弾の5倍の荷重を保持し、以前のモデルよりも速く遠くに飛ぶことができるので、机上では圧倒的に優れた選択でした。しかし、テスト飛行を実行した二人のパイロットは、墜落して死亡しました。
墜落の原因は、B-17のコントロールは非常に複雑であることでした。経験豊富なヒル少佐もコントロールロックを解除するのを忘れ、致命的なクラッシュを引き起こしました。 言い換えると、爆撃機は素晴らしい。しかし、ベテランのパイロットでさえうまく管理するための要素が多すぎるため、ほとんど役に立たなかったと言えます。
記憶に頼ったプロセスに頼ったシステムは、人為的エラーに対して非常に脆弱になります。そのためB-17では飛行のさまざまな段階で必要となるチェックリストが採用されました。 これにより、B-17は深刻なリスクなしで飛行できるようになっただけでなく、経験の少ないパイロットでも問題なくタスクを実行できるようになりました。
これは、チェックリストを使用することによる人的エラーを減らす方法の一例にすぎません。 人的エラーをほとんど強制的に発生させるのに十分に複雑なプロセスの場合、人為的エラーを抑える非常に効果的な方法となります。
チェックリストは行動エラーを抑制する
チェックリストが記憶の失効を防ぐ機能があり、読んでからそれを実行するのにかかる時間内に指示を忘れてしまうことを除けば、記憶の喪失という形の人為的エラーは起こり得ません。
タスクリストは白黒で文書化され、ほとんどのチェックリストでは進行状況が記録されます。各タスクを読み取り、完了としてマークする必要があるため、意図せずに行程を忘れることは不可能と言えます。
タスクリストを読むことでラプス(抜け)を防ぐ方法と同時に、各行程に指示を与えることでスリップ(意図しない間違え)を抑制することができます。 これにより、各工程に指定された完了方法が正しい方法で満足いく基準に従って実行されます。
また、自分の弱点を書き出しておく事も非常に有効だと言います。ミスが多いな!損してるな!!という人は是非改善してください。
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